生成AI利用率96.2%でも組織導入は2割台。大分の社長が数字に騙されない前に確認すべき3つ
「うちももうAI使ってるよ」——大分の経営者同士の会話で、こう言われる場面が増えました。一方で、社内を見ると個人のChatGPTだけが動いていて、顧客向け業務やルール整備は手つかず、という相談も続いています。2026年7月28日に公表された全国調査は、利用率96.2%という数字と、別の公的調査が示す組織導入2割台が、同時に正しいことを示しています。騙されているのではなく、測り方が違うのです。
—-
7月28日公表の調査:利用率96.2%、日常利用83%
株式会社オプティアスは、中小企業106社を対象に「DX・生成AI活用状況調査」を2024年度と2026年度の2回実施しました。生成AIを業務で「利用している」と答えた割合は、2024年度55.2%から2026年度96.2%へと急上昇しています。2年で「試す段階」から「日常業務に組み込む段階」へ移った、という整理です。
利用ツールも単一から複数へ変わりました。2026年度はChatGPT 75.5%、Gemini 74.5%、Claude 40.6%、Microsoft Copilot 34.0%と、併用が主流です。毎日から週数回以上使う層は83.0%に達し、個人の習慣として定着した面は大きいです。
業務別では、事務・バックオフィス87.5%、営業・マーケティング78.6%、経営企画・戦略策定67.3%と、社内の知的作業中心に広がっています。一方、カスタマーサポートは24.0%にとどまり、顧客接点への展開はまだ浅いです。今後1年の投資方針では76.4%が維持または拡大、約8割が成果を実感(5段階評価で3以上)と回答しています。
企業が挙げた課題は、人材・スキル不足14.6%、セキュリティ・情報漏洩12.5%が上位です。利用率は高いのに、組織運営の不安も残っている——この二面性が、現場の実感に近いです。
—-
なぜ96%と20%が同時に出るのか——調査の「定義」が違う
同じ2026年でも、AIに関する数字は大きく割れます。社内で「導入率◯%」と言う前に、何を数えたかを揃える必要があります。
項目:オプティアス調査(2026年度)
内容:96.2%。中小企業106社。業務で生成AIを「利用している」自己申告。個人の日常利用を含む
項目:中小企業基盤整備機構(2026年3月)
内容:20.4%。全国1万社規模。AI全般を会社として「全社的/一部業務で導入している」合計
項目:フォーバルGDXリサーチ(2026年8月21日)
内容:36.9%。経営者1,653人。業務でAIを「既に活用している」
項目:商工中金付帯調査(2026年1月)
内容:約6割超が「会社での導入はなく、個人の判断に任せている」。積極活用層は約3割
つまり、96%は「誰かが業務で触っている」に近く、20%台は「会社として仕組みに組み込んだ」に近いです。大分の中小企業でも、社長がGeminiで資料を作り、事務がChatGPTでメール下書きをしている——それだけで「96%側」には入ります。一方、利用サービスの統一、入力してよい情報の線引き、顧客向け出力の確認フローがなければ、「20%側」には入りません。
シャドーAIの話(個人契約・管理外利用)とも重なります。利用率が上がるほど、定義を混同すると「もう導入済み」と早合点し、ルール整備が後回しになるリスクがあります。
—-
大分の社長が、今週確認すべき3つ
【1】自社がどの数字の層にいるか、3問で棚卸しする
会議で「うちも使っている」と言える根拠を、社内で3問だけ揃えてください。①業務で生成AIを使っている人は誰か(名前または役割)。②会社として許可したサービス名は何か。③顧客情報や見積・契約を入力した実績があるか。①だけYESなら96%側、②③もYESなら組織導入側に近づいています。大分県のDAIB(年会費2万円、2026年8月時点で54社が入会申込)や9月から始まる県内のDX・AI人材育成プログラムは、②③を埋める外部の選択肢です。ただし、研修やコミュニティに入る前に、自社がどの層にいるかを知らないと、効果測定ができません。
- 利用者を役割で書き、個人契約か会社契約かを区別した
- 許可ツール名を1つ以上、社内で明示した(未決なら「未決」と書く)
- 顧客情報・見積・契約を入力した有無を、YES/NOで確認した
【2】「事務87%」と「顧客24%」の差から、次の1業務を選ぶ
調査が示す伸びしろは、バックオフィスから顧客接点です。カスタマーサポート24.0%は、問い合わせ対応、FAQ整備、電話後のメモ要約など、まだ手を付けやすい領域が残っているサインです。ただし、顧客向けは社内メモよりリスクが高い。最初から全チャネルに広げず、社内完結の下書き(人が必ず確認してから送る)に限定してください。事務・営業で効果を出している会社ほど、次の一手は「顧客に届く前の一段」に絞る方が、セキュリティ12.5%の懸念にも触れずに済みます。
- 社内だけで完結するAI活用候補を1つ決めた
- 顧客向け自動送信は、初回スコープから外した
- 出力の最終確認者を名前で書いた
【3】複数ツール併用を、ルール1枚に落とす
ChatGPT・Gemini・Claude・Copilotの併用が主流になった反面、入力データの行方がサービスごとに分かれます。社長が「自由に使っていい」と言うだけでは、96%の世界と20%の世界の間で揺れ続けます。最低限、次の4行を社内で共有してください。使ってよいサービス名、入力禁止データ(顧客個人情報、未公開見積、取引先との秘密情報)、生成物の保存場所、やめたときの契約解約担当。これだけで、シャドーAIの拡大を止める土台になります。
- 許可ツールと禁止ツールを書き分けた
- 入力禁止データを3例以上、具体名で列挙した
- 契約解約・退職時のアカウント停止担当を決めた
株式会社コラボでは、社長の壁打ちとして、「利用率は高いが組織としては未整備」という状態を、3問の棚卸しとルール1枚に分解する整理をしています。次の100万円投資(中堅中小の68.1%がAIに100万円超を予定、という別調査)の前に、数字の定義を揃えた方が、二重投資を防げます。
—-
まとめ:一言で言うと
2026年7月28日公表の調査では、中小企業の生成AI利用率は96.2%まで上がり、日常利用83%、事務・バックオフィス87.5%が中心でした。一方、会社としてのAI導入を測る調査では2割台から4割弱が並びます。大分の社長が今週やるのは、最新ツールの追加ではなく、自社が「誰かが触っている層」か「会社として組み込んだ層」かを3問で確認し、許可ツールと禁止データを1枚に書くことです。96%は達成しやすい。20%台に近づくのは、ルールと業務選定の仕事です。
—-
参考:株式会社オプティアス「DX・生成AI活用状況調査」、公表日2026年7月28日/独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」、2026年3月