「月額は安いのに高すぎる」。費用で使う人を絞った60.4%と、ID共有39.6%の会社が失うもの
「1ユーザーいくらなら安い。全員には付けられないから、まずは担当者だけにしよう」——その判断のあとに、紙・メール・Excelが戻ってきて「導入したのに現場は変わっていない」と感じていませんか。NTTデータビジネスブレインズが2026年8月に業務・管理系の管理職221名へ行った調査では、費用を理由に使うべき人を絞っている(または導入していない)業務がある、と答えた割合が60.4%にのぼります。この記事では、「安い月額」が結果として高くつく構造と、契約前に握るべき線引きを整理します。
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「安い月額」が、使う人を減らす
クラウドの業務システムは、初期費用を抑えやすい一方で、利用者数(ID数)や処理件数に応じた課金が一般的です。調査でも、費用形態は利用量課金31.0%、定額25.9%、買い切り23.1%、ID数課金22.2%と分散しています。一方で「わからない/答えられない」が19.0%。業務・管理系の管理職でも、約5人に1人は自社の費用の決まり方を把握していません。
判断の見方もズレています。導入可否で費用面を最も重視する見方の最多は「初期費用の大きさ」26.6%、次いで「年間総額が予算に収まるか」24.0%。「1人あたり月額単価が妥当か」はわずか8.4%です。売り手は単価で語り、買い手は総額で決める。この非対称のまま契約すると、あとから出てくる費用への備えが薄くなります。
シャドーAIや生成AIのルール整備は別記事でも触れていますが、今日の主題は生成AIそのものではありません。業務システム側でも、「安く見せた契約」が現場の使い方を歪める、という同じ形の失敗が起きています。
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60.4%が対象者を絞り、39.6%がIDを分け合う
費用を理由に「本来は全員が使うべき業務なのに対象者を絞っている/導入していない」業務があるか、という問いに対し、「複数ある」56.5%と「1つある」3.9%を合わせて60.4%。過去にあった分を含めると約8割です。例外ではなく、複数業務にまたがって常態化している、と読めます。
ID数課金を理由に「本来とは違う使い方」をした経験があると答えた割合は約88%。内訳の上位は次のとおりです。
項目:1つのIDを複数人で共有した
内容:39.6%
項目:承認者だけがIDを持ち、申請は代理入力した
内容:32.5%
項目:IDを持たない人の分は紙・メール・Excelで運用した
内容:31.2%
項目:部署・拠点単位で導入を見送った
内容:24.7%
ここにDXの逆説があります。システムは入れた。でも申請者名が残らない、手作業が残る、拠点ごとに別ルールが生まれる。月額の見た目は安いのに、現場の手間と監査リスクが増える。これが「月額は安いのに高すぎる」の中身です。
社外とのやり取りでも同じ壁が出ます。費用を理由に社外相手や業務を限定している31.2%、システム上ではやり取りせず紙・メール・FAX等にしている27.3%。合わせて58.4%が、サプライチェーン側の連携を費用で制限しています。取引先を巻き込んだ瞬間にIDが増え、契約の前提が崩れる、という構造です。
導入後の想定外費用も重いです。「特にない」は7.8%にとどまり、87.0%が何らかの想定外を経験しています。
項目:既存システムとの連携開発費
内容:39.0%
項目:帳票や入力画面のカスタマイズ費用
内容:37.0%
項目:利用人数増に伴う追加ライセンス
内容:29.9%
カタログの月額に含まれない費用が、使える状態にするための本丸、という構図です。見送り理由の最多も「予算がなかった」14.4%ではなく、「費用対効果を数値で示せなかった」30.1%。お金の有無より、説明の設計で止まっています。
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契約前に切る4つの線引き(丸投げしない)
ベンダーに「おすすめプラン」を丸投げすると、単価の安さと現場の歪みがセットで返ってきます。中小企業のIT担当や社長が、契約前に自社側で切る線は次の4つです。
1. 対象者は「減らす」か「総額で持つ」か
全員必須の業務を、費用だけで一部だけにすると、Excelが残ります。絞るなら「今回は対象外の理由」を紙に残す。広げるなら、追加ライセンスが何人分・いつ発生するかまで年間総額に入れる。
2. ID共有は禁止を明文化する
共有アカウントは規約違反だけでなく、誰が操作したかの追跡が崩れる。セキュリティ対策の話は別記事でも触れていますが、業務システムでも「送信前の関所」と同じで、入口のIDが曖昧だと後から直せません。
3. 連携・帳票は見積の別紙にする
月額と初期導入だけを比較して押印しない。既存会計・販売管理との連携、帳票・画面の改修を「ある/ない/概算」で別紙にする。無い前提の安い見積は、87%側の想定外に入りやすいです。
4. 社外ユーザーの扱いを先に決める
取引先・協力会社をシステムに載せるか、載せないならどの手作業が残るかを先に書く。載せるとIDが跳ねる契約なら、ゲスト枠や従量の上限、代替手段(共有フォルダや電子契約)を比較表にする。
今日やること(3分)
- いま契約中の業務システムを1つ選び、課金単位(ID/従量/定額)を一言で書く
- 「本来は使うべきなのにIDが無い人」がいる業務を、あれば1つ書く
- その業務で紙・メール・Excelが残っていないか、残っているならどれか印をつける
- 次回更新または追加契約の前に、対象人数の年間総額と想定外3項目(連携・帳票・追加ID)をメモする
- ID共有の有無を現場に確認し、あれば禁止と代替手順を口頭で一度伝える
比較の目安は次のとおりです。
1. 単価だけ見る:月額は安く見えるが、対象外の手作業と共有リスクが残る
2. 年間総額で見る:追加ライセンスと連携が見え、稟議が通りやすい
3. 対象者と監査を見る:誰が操作したかが残り、セキュリティと説明責任が両立する
4. 丸投げする:おすすめプランに合わせ、現場が歪んだあとに解約か増額かの二択になる
大分の中小企業でも、情シスが一人か不在のまま複数のSaaSが積み上がるケースは珍しくありません。新しいAIツールを足す前に、いま払っている業務システムの「誰が使えるか」を一度戻すほうが、投資対効果の説明は早くなります。
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まとめ:(一言で言うと)
・費用で使う人を絞る会社は60.4%、ID共有は39.6%。安い月額が現場の歪みを生む
・想定外費用は87%。連携・帳票・追加IDを見積の別紙にしないと比較にならない
・次の一手は、対象人数の年間総額と「ID共有なし」を契約前の一文にすること
株式会社コラボでは、大分の中小企業がIT・DXの導入や発注の前に、業務の切り方と費用の前提を壁打ちで整理する支援をしています。ツール選定の前でも後でも、判断材料を先に揃えられるほうが損は小さくなります。
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参考:NTTデータビジネスブレインズ「業務システムの費用に関する実態調査」(発表日:2026年9月9日)