経営・新規事業

「人も金も足りない」と言う前に。新規事業の成否を分けたのは47ポイント差の「構造」だった

タグ: 新規事業 / 経営相談 / 壁打ち / 中小企業 / DX / AI活用 / 地域経済

「人が足りないから新規事業が止まるんです」——会議でこう言ったあと、本当に人が足りないのか、それとも決め方が足りないのか、自分でも少し迷ったことはありませんか。株式会社bridgeが2026年6月に実施した「新規事業実態調査2026」(売上50〜500億円の中堅企業に勤める経営・役員151名と現場マネージャー152名、計303名)では、現場の47.9%が「リソース不足」を壁に挙げた一方、経営層は29.8%にとどまり、認識差は18.1ポイントでした。この記事では、足りないものを「人・金」だけで片づけないための棚卸しを整理します。

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「リソース不足」は現場と経営で見え方が違う

新規事業が「なんとなく立ち消える」会社の話は別記事でも触れていますが、今日の焦点はもう一段手前です。止まりかけたときに、何を原因だと信じているか、という話です。

同じ組織のなかでも、課題のラベルがずれます。現場は「人も時間も足りない」と感じやすく、経営は「そこまで足りていないはずがない」と感じやすい。調査では、そのズレが数字になって出ています。

項目:現場マネージャーが「リソース不足」を壁と答えた割合
内容:47.9%

項目:経営層が同じ答えをした割合
内容:29.8%

項目:認識差
内容:18.1ポイント

ここで重要なのは、どちらが正しいか決めつけることではありません。ズレたまま会議を続けると、現場は「どうせ増やしてもらえない」と諦め、経営は「また足りないと言っている」と聞き流し、案件だけが薄れていきます。AIツールやDX予算を増やしても、この会話が噛み合わなければ、投資は「使われないまま」になりやすいです。

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成否を分けたのはリソースの量ではなく「構造」だった

調査では、新規事業活動の達成度を10段階で自己評価し、7〜10を成功企業、1〜4を非成功企業と定義しています。成功企業と非成功企業の差が大きかった要因の上位は、いずれも「人数や予算の多さ」ではなく、組織の構造でした。

項目:1位 挑戦を評価する仕組み
内容:成功企業と非成功企業の差 +47.5ポイント(経営者回答)

項目:2位 外部知見をつなぐハブ
内容:差 +47.3ポイント

項目:3位 迷わせない意思決定基準
内容:差 +47.1ポイント

いずれも差分47ポイント超です。全設問のなかでもっとも差が開いたのは「専門知見や外部リソースを組織としてつなぐ支援機能(ハブ)」の有無で、成功企業の79.0%が「ある」と答えた一方、非成功企業は31.6%。差は47.4ポイントにのぼります。あわせて、成功企業の79.0%は、事前に合意した基準に沿ってその場で意思決定でき、結論の先送りが起きていないと回答しています。

言い換えると、止まっている主因は「やり方の教科書が足りない」ことではなく、「評価されない」「外の知見が届かない」「決める基準がない」という前提側です。生成AIやノーコードで企画資料は速く作れても、誰が何を見てゴー/ストップを出すかが曖昧なら、資料だけが増えて事業は進みません。

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中小企業がそのまま真似しなくていいこと、真似した方がいいこと

対象は売上50〜500億円の中堅企業です。大分をはじめ地方の中小企業は、専任の新規事業部や厚い事務局がない前提で読むのが現実的です。大きな組織設計を丸ごと移植する必要はありません。代わりに、次の3機能を「小さく持つ」ことが効きます。

1. 挑戦を評価する物差し
既存事業と同じ「短期の売上・利益」だけで担当者を測ると、安全な改善案しか出ません。仮説検証の回数、顧客ヒアリングの質、学びの共有など、探索側の物差しを1つでも明文化します。

2. 外部知見をつなぐハブ
社内だけで閉じると、業界の常識と社内の空気が同じ輪になります。経営の壁打ち相手、同業以外の実務家、IT・DX・AIの相談先など、「誰に聞けば次の材料が増えるか」を役割として決めておきます。ハブは部署名ではなく、接続の習慣です。

3. 迷わせない意思決定基準
「もう少し様子を見る」が増える会社ほど、結論の先送りが常態化します。何を満たしたら続けるか、何を満たさなかったら止めるか、金額・期間・顧客反応の下限を先に合意します。基準があると、担当者は失敗の責任を過剰に恐れにくくなります。

AI活用やDX投資も同じ構造です。「ツールを入れたかどうか」ではなく、「誰のどの判断を速くするか」が先です。補助金や研修の話は別記事でも整理していますが、今日は投資の前に、立ち消えを生む会話の型を直す順番で考えます。

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今日やること(3分)

  • いま止まっている新規事業(または候補)を1件だけ紙に書く
  • 「足りない」と言っているものが人・金・時間のどれか、現場と経営で言葉が一致しているか確認する
  • 挑戦の評価・外部ハブ・判断基準のうち、いちばん弱いものを1つ選ぶ
  • その1つについて、今週誰と何を決めるか(30分の壁打ち相手を含む)を決める
  • AIやシステム導入の提案が来ていても、上記が空欄なら発注を一旦止める

比較すると、次のような差が見えやすいです。

項目:止まりやすい会社
内容:「人が足りない」で会話が終わり、評価は既存事業と同じ、外部相談は場当たり、判断は毎回持ち帰り

項目:動きやすい会社
内容:足りない中身を分解し、探索用の物差しがあり、外部のハブが固定され、続ける/止める基準が先にある

株式会社コラボでは、社長の相談窓口や壁打ちセッションで、この棚卸しから伴走しています。新規事業のアイデア出しそのものより、「なぜ今止まっているか」を経営と現場で同じ絵にする時間の方が、あとから効くことが多いです。

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まとめ:(一言で言うと)

・新規事業が進まない主因は、調査上も「人・金の量」より評価・外部ハブ・判断基準の差が大きい
・現場と経営の「足りない」認識が18ポイントずれたままでは、AIやDXの投資も空転しやすい
・中小企業は大きな組織を真似ず、3機能を小さく持てばよい

次の一手は、止まりかけた案件を1件選び、弱い構造を1つだけ直す壁打ちの予定を入れることです。

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参考:株式会社bridge「新規事業実態調査2026」(調査期間:2026年6月)、PR TIMES掲載リリース