「AIに聞けば進む」は半分だけ。新規事業の32.9%が「当たり前の回答」で止まる会社の壁打ち設計
「AIと何度も壁打ちしたのに、企画書だけが立派になって、次に誰へ何を聞くかは決まっていない」——そんな新規事業の止まり方が増えています。2026年9月15日に発表された調査では、新規事業でAIを使う際の課題として32.9%が「当たり前の回答しか出てこない」と答えました。この記事では、AIを壁打ち相手から外すのではなく、人と顧客を含めて役割を分ける方法を考えます。
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新規事業のAI活用は95.9%、それでも約8割が課題を抱える
Spready株式会社は9月15日、新規事業家の守屋実氏の実践知を学習した対話型AI「AI守屋実」のα版を発表しました。50時間以上のインタビューを再編集した全27コンテンツを中核データとし、新規事業の判断をいつでも相談できるようにするサービスです。
注目したいのは、サービスそのものより開発背景にある数字です。同社の「Spready新規事業実態調査2026」には、新規事業に関わる462人が回答しました。「AIを活用していない」は4.1%だけで、裏返せば95.9%が何らかの形で使っています。一方、「課題は感じていない」は20.6%にとどまり、約8割には課題があります。
課題の上位は次の通りです。
当たり前の回答しか出てこない:32.9%
活用スキル・リテラシーが不足している:31.2%
学習用データや自社情報の準備・品質が不足している:30.1%
この結果は、「AIを使えば新規事業が進む」という単純な話ではありません。公開情報だけを与えて「地方の中小企業向けの新サービスを考えて」と聞けば、一般論が返りやすいのは自然です。誰が困っているのか、自社だけが持つ顧客接点は何か、いくらなら買うのかといった材料がなければ、AIは判断の根拠をつくれません。
同じ調査では、今後進めたい施策の首位が「新規事業創出人材の育成」で34.8%となり、3年連続で最も多い一方、「新規事業部門の立ち上げ」は32.9%から19.3%へ13.6ポイント下がりました。箱をつくるより、判断できる人を育てる方向へ重心が移っています。中小企業では専任部署を置きにくいため、この変化はより現実的です。
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AI壁打ち、人の伴走、顧客インタビューは代替関係ではない
壁打ちを定例化する重要性は別記事でも触れていますが、今回は「誰に何を聞くか」が焦点です。AI、人の伴走者、想定顧客は、同じ相談相手ではありません。
1. 汎用AIとの壁打ち
得意:情報の要約、論点の洗い出し、複数案の比較、質問案の作成
弱点:自社固有の事情や、まだ言葉になっていない顧客の不満を知らない
使う場面:会議前の準備、仮説の発散、インタビュー項目の下書き
2. 実践知を持つAIとの壁打ち
得意:一定の判断軸を繰り返し使う、担当者ごとの議論の出発点をそろえる
弱点:学習元の知見の範囲を超える事実確認や、自社の責任を伴う決裁はできない
使う場面:仮説を絞る、次に確かめる項目を決める、社内共通の型を学ぶ
3. 人の伴走者との壁打ち
得意:社内事情、予算、現場の抵抗まで踏まえて優先順位を決める
弱点:相談できる時間と費用に限りがあり、相手の経験にも左右される
使う場面:続行・撤退の判断、社内調整、検証結果の解釈
4. 想定顧客へのインタビュー
得意:課題が本当にあるか、今どう対処しているか、対価を払うかを確かめる
弱点:回答者探しと日程調整に時間がかかり、聞き方による偏りも出る
使う場面:事業化前の仮説検証、価格や導入条件の確認
ビザスクが新規事業経験者250人を調べた別の調査では、97.2%がインタビューを重要と考えていました。しかし、事業化前に10回以上実施した人は43.2%です。さらに80.4%が、インタビュー不足による追加調査などの手戻りを経験していました。
AIは、顧客に会う前の準備時間を短くできます。ただし、顧客の代役にはなりません。AIが整えた仮説を顧客へぶつけ、返ってきた事実を人と解釈し、次の問いを再びAIで整える。この循環をつくることが、企画書だけを増やさない使い方です。
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大分の中小企業が壁打ちを「次の検証」につなげる
大分の中小企業で新規事業を進めるとき、専任担当者、外部コンサル、AIツールをすべてそろえる必要はありません。まず、AIに入力する材料と、AIから人へ判断を渡す条件を決めます。
例えば「観光客向けサービスを考えたい」だけでは情報が足りません。「別府の宿泊施設3社から、外国人客への深夜対応に週5時間かかると聞いた。月3万円で削減できる案を、導入障壁も含めて比較して」とすれば、議論は具体的になります。それでも返答は仮説です。施設側への再確認なしに、開発発注や補助金申請へ進めてはいけません。
今日やること(3分):進行中の新規事業を1件選び、直近のAI回答から「事実」「推測」「次に人へ聞くこと」を1行ずつ抜き出す。
- AIに、対象顧客、現在の代替手段、困る頻度、予算の仮説を渡した
- AIの回答に、参照元または判断根拠があるか確認した
- AIの提案を採用する前に、想定顧客へ聞く質問を3問つくった
- 2週間以内に話を聞く顧客候補を、社名または役割で3人挙げた
- 続行、修正、停止を決める数字と期限を置いた
- 予算や信用に影響する判断を、人の壁打ち相手へ渡す条件を決めた
チェックが少ない場合、追加すべきものは新しいAIツールではなく、一次情報かもしれません。まず3人に聞き、回答が割れたら質問を修正する。共通する困りごとが見えたら、最小の試作品や手作業で価値を確かめる。その記録をAIに戻せば、回答は自社の現実に近づきます。
人の壁打ち相手には、答えを出してもらうより、「その数字は誰に聞いたのか」「やめる条件は何か」「次の2週間で何が変われば前進と言えるか」を問う役割を持ってもらいます。社長と担当者だけでは言いにくい撤退条件も、利害から少し離れた相手がいれば先に言葉にできます。
株式会社コラボでは、社長の相談窓口や壁打ちセッションを通じて、新規事業の仮説、顧客への質問、IT・AIを使う範囲、次の検証期限を一緒に整理しています。AIの導入相談であっても、最初に見るのはツール名ではありません。「誰のどんな事実を、いつまでに確かめるか」です。そこが決まれば、AIは相談相手を置き換えるものではなく、限られた人との対話を濃くする道具になります。
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まとめ:AIには論点、人には判断、顧客には事実を聞く
・新規事業でAIを使っていても、32.9%は「当たり前の回答」に悩んでいます
・AI壁打ちは準備と整理に使い、人の伴走者には優先順位と撤退条件を問います
・顧客インタビューで一次情報を取り、結果をAIへ戻す循環が必要です
次の一手:直近のAI回答を一つ開き、2週間以内に顧客へ確かめる質問を3問だけ書き出します。
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参考:Spready株式会社「AI守屋実」α版発表、2026年9月15日/株式会社ビザスク「新規事業開発における一次情報の重要性に関するアンケート」、2026年3月16日