IT・DX活用

「AI利用59.6%」でもチャットどまりが8割。自動化19.1%と推進者充足11.1%が並ぶ段差

タグ: AI活用 / DX / 中小企業 / 大分 / IT担当 / 壁打ち / 社内SE

「うちももう6割くらい使っている会社の仲間入りだよね」——そう言われて、会話の下書きや調べものまでは進んだのに、次の自動化の話になると誰も前に出ない。そんな場面が、大分の中小企業でも増えています。クラウドワークスが2026年9月2〜8日に実施した「中小企業のAI活用レベル調査」(スクリーニング4,172名/本調査576名)では、AIを利用している企業は59.6%でした。一方で、利用企業のうちチャットどまりは80.9%、業務自動化まで届いたのは19.1%。推進者が「足りている」と答えた企業は全体で11.1%にとどまります。この記事では、伸びた利用率と、中身の段差を分けて読みます。

—-

「使っている59.6%」の中身は、チャットどまり80.9%である

まず、見出しの「約6割が利用」を分解します。同調査は活用状況をLv.0〜Lv.5の6段階で聞いています。

項目:Lv.0 会社として関心がない(未導入)
内容:関心なし

項目:Lv.1 興味はあるが始め方がわからない(未導入)
内容:未導入のまま検討止まり

項目:Lv.2 社員の個人利用。社内ルールは未整備
内容:個人任せの入口

項目:Lv.3 全社導入だがチャット機能の活用にとどまる
内容:組織導入でも会話止まり

項目:Lv.4 AIと業務システムが連携し、一部作業が自動化
内容:業務代替の入口

項目:Lv.5 複数AIが連携し、業務全体が自律的に最適化
内容:全体最適(少数)

AIを利用している企業(Lv.2〜Lv.5)は59.6%。そのうち利用企業2,485社の内訳では、Lv.2・Lv.3の「チャットどまり」が80.9%、Lv.4・Lv.5の「業務自動化済み」は19.1%です。利用率の高さと、仕事の進め方が変わった比率は、同じ物差しではありません。利用率54.4%の裏側に全社11.5%やルールなし53.2%がある、という話は別記事でも触れていますが、今日は「利用している」側の中身そのものを段差として見ます。

「もう使っている」と言っても、現場の実態は下書き・調べもの・個人の試行に寄りやすい、というのがこの数字の読み方です。ツールを入れた会社が増えたこと自体は事実です。ただし、それを「自動化の準備が整った」と読み替えると、稟議の根拠がずれます。

—-

推進者「足りている」11.1%。自動化企業でも26.1%しか充足しない

段差の二本目が、人材です。部署・会社単位でAI導入を主導する「AI推進者」について、「十分な人員が確保できている」と答えた企業は全体でわずか11.1%でした。

項目:全体
内容:推進者充足 11.1%

項目:チャットどまり企業(Lv.2・Lv.3)
内容:推進者充足 5.5%

項目:業務自動化済み企業(Lv.4・Lv.5)
内容:推進者充足 26.1%(4社に1社)

自動化まで進んだ会社でも、4社に3社は「足りている」とは言えない、という構図です。さらに、チャットどまりと自動化済みで障壁を比べると、最も差が開いたのは「AIに詳しい推進リーダーの欠如」(74.5%対54.0%、差20.5ポイント)でした。ツールの性能差より先に、次の一手を切れる人がいないことが、止まり方を分けています。

確保を検討した経験がある企業は65.8%にのぼります。放置しているわけではありません。それでも、採用では47.5%、育成では45.1%、外注では48.3%が「うまくいかず中断」または「検討したが未着手」です。外注は取り組み済みが18.7%と最も低く、「検討したことがない」が33.0%と3社に1社あります。手段を変えようとしても、人がいないことで止まる堂々巡りが、数字に表れています。

—-

自動化済み企業は、外部AI人材の依頼がチャットどまりの3.7倍

ここで意外なのが、進んでいる会社の側の動きです。業務ごとに外部のAI人材へ依頼している割合は、チャットどまり企業で7.0%、業務自動化済み企業で26.1%。後者は前者の3.7倍です。利用企業の中でも、Lv.2の個人活用層6.0%から、Lv.5の全体最適層32.9%まで、レベルが上がるほど外部依頼率が段階的に上がります。

つまり「人材が足りないから内製で耐える」ではなく、「足りない工程だけ外部とつなぐ」会社のほうが、自動化側に寄っている、という読みができます。自社だけで抱えられる工程も偏っています。業務の見極め・手順の標準化・ツール選定といった準備は、4割前後が自社対応できると答えます。一方、ツール同士の連携設定は21.7%、不具合の原因調査・修復は17.7%と2割前後まで落ちます。連携工程を困難とした企業が挙げた理由の上位は、「時間を確保できない」45.5%、「知識・スキルのある人材がいない」41.7%、「判断・確認できる人がいない」24.4%でした。

大分の中小企業でも、情シスや兼務のIT担当が一人でチャット導入まで持っていき、連携と運用設計で手が止まる、という流れは珍しくありません。足りないのは「AI推進者という肩書の正社員を一人増やすこと」だけとは限りません。どの工程を自社に残し、どの工程を外部に渡すかを切れていない、という構造の問題です。

今日やること(3分):自社がLv.2〜Lv.5のどこに近いかを一語で書き、次に止まった工程が「準備」か「連携」かを○で囲む。

  • いまの実態は「個人利用/全社チャット/一部自動化」のどれに近いか、一言で書けた
  • 「推進者が足りない」を、採用・育成・外注・業務ごとの外部依頼のどれで埋めるつもりか、先に一つ選んだ
  • 連携(システム接続・不具合切り分け)を社内だけで抱える前提になっていないか、見直した
  • 稟議資料に「利用率○割」だけを書かず、「チャットどまりか自動化か」を併記した
  • 機密の送信前ルールと、最終確認者の名前が空白のまま席を増やしていないか確認した

—-

中小企業がこの段差を誤読しないための選択肢

「利用率」と「自動化率」を同じ稟議に載せない

59.6%は利用の広がりです。利用企業内の自動化19.1%は、別の到達点です。混ぜると「もう十分進んでいる」か「まだ全然だ」の両極端に振れます。社内説明では、分母と到達レベルを必ず分けて書いてください。

推進者不足を、正社員一人採用の一点突破にしない

充足11.1%は厳しい数字ですが、自動化側でも充足は26.1%です。足りないまま進んでいる会社もあります。採用・育成・外注が半数近く止まるなら、業務単位で外部の専門性とつなぐ設計を、最初から選択肢に入れておくほうが現実的です。

準備は自社、連携は外部、という線を先に引く

準備工程は自社で4割前後が対応できる一方、連携は2割前後です。ここを同じ「内製」で押し通すと、時間と人材の不足がそのまま止まります。大分では県のDAIBや相談窓口、民間の壁打ちなど、次の一手を外部と設計する場もあります。ツール選定の前に、止めている工程を言語化するほうが先です。

株式会社コラボでは、社長の相談窓口や壁打ちセッションを通じて、「今どこで止まっているか」「誰が最終確認するか」「どの工程を外に出すか」を先に整理する支援をしています。利用率の数字を追う前に、段差の位置を揃えることが、損をしない近道です。

—-

まとめ:(一言で言うと)

・AI利用59.6%の中身は、チャットどまり80.9%と自動化19.1%に分かれる
・推進者充足は全体11.1%。自動化企業でも26.1%にとどまる
・自動化側は外部AI人材依頼がチャットどまりの3.7倍。連携工程は自社2割前後

次の一手:今日のうちに、自社の到達レベルと「準備/連携」のどちらで止まっているかを一枚に書いてください。

—-
参考:株式会社クラウドワークス「中小企業のAI活用レベル調査」プレスリリース、2026年9月16日発表(調査期間:2026年9月2日〜9月8日)