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「もう半数は使っている」は早すぎる。全社11.5%・ルールなし53.2%のまま伸ばす会社が損をする理由

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「うちももう半分くらい使っているはずだから、次は全社展開でいいよね」——そう言われて、社内ルールも業務の洗い出しもまだ白紙のまま、稟議だけが進む。そんな場面が、大分の中小企業でも増えています。日本商工会議所のLOBO調査(2026年8月、有効回答1,920社)では、生成AIを「活用している」企業が54.4%と前回比で18.4ポイント伸びた一方、活用企業のうち社内ルール・ガイドラインを整備できていない割合は53.2%にのぼります。この記事では、伸びた利用率の裏側にある「使われ方」と、伸ばす前に切る線を整理します。

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生成AI活用54.4%の内訳は、全社11.5%と希望者のみ19.5%である

まず、見出しの「半数超が活用」を分解します。同調査の内訳は次のとおりです。

項目:全社的に活用
内容:11.5%

項目:特定部門で活用
内容:23.4%

項目:希望者のみ活用
内容:19.5%

項目:現状では活用していないが、今後活用を検討
内容:24.7%

「活用している」54.4%は、このうち上3つを足した数字です。全社で回している会社は1割強にとどまり、希望者任せが約2割あります。前向き層(活用+検討)は79.1%まで広がっていますが、それは「ツールを触ったことがある」と「会社の仕事の進め方が変わった」が同じではない、という話とつながります。導入と利用の定義差は別記事でも触れていますが、今日は「伸びた利用率」そのものが、そのまま全社展開の根拠にならない点を見ます。

用途の中心も、派手な全社改革ではありません。活用・検討企業の業務(複数回答)では、文書作成・要約が81.7%、情報収集・アイデア出しが57.1%、デザイン・画像生成が39.6%、データ集計・分析が31.5%です。議事録や下書き、調べものが主戦場です。効果として最も多いのも「業務時間の削減・作業効率化」66.3%で、「特に効果を感じていない」は0.9%とごく少数です。効いている会社はある。ただし、効いている場所は「個人や一部門の定型作業」に寄りやすい、というのが数字の読み方です。

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ルールなし53.2%のまま伸ばすのは、高すぎる

伸びた利用率と同時に並んでいるのが、社内ルールの遅れです。活用企業を対象にした整備状況は、おおむね次の構図です。

項目:社内ルール・ガイドラインを策定し運用(策定中含む)
内容:22.4%

項目:専用ルールはないが、既存の社内規定で対応
内容:23.2%

項目:今後策定したいが、何を参考にしたらよいかわからない
内容:34.9%

項目:策定する予定はない、必要性を感じない
内容:18.3%

後者2つを合わせた53.2%が、実質的にルールを整えきれていない層です。「何を参考にしたらよいかわからない」が最多である点は重要です。禁止したいわけでも、放置したいわけでもなく、作り方が分からず止まっている会社が多い、という意味だからです。

課題の上位も、ツールの性能ではなく運用側に偏っています。

1. 活用できる業務の洗い出し、活用方法の検討:53.3%
2. 社員教育、社内ルールの制定:40.5%
3. 主導・推進する人材の育成・確保:39.0%
4. 生成情報の正確性・ファクトチェック:37.9%
5. 入力内容の外部漏えい対策:32.5%

ここでの逆張りは単純です。「活用が伸びたから予算と席を増やす」より先に、「どの業務で、誰が、何を入れてよいか」が言葉になっていないなら、伸ばすほど隠れ利用と事故の両方のリスクが上がります。不安が強くても技術対策が追いつかない実態は別記事でも整理していますが、今回の日商調査は、利用率が上がったあとにルールが追いついていない、という時間差を全国規模で示しています。

大分でも、おおいたAIスクールの公開セミナーが9月25日・30日に予定されるなど、触る機会は増えています。触る前に「入力してよい情報」と「会社として認めるツール」が決まっていないと、学習コストだけが増えて、仕事の型は残りません。

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丸投げで伸ばす会社と、先に線を切る会社の違い

よくある進め方を、正直に並べます。

1. 利用率の見出しだけ見て全社展開:稟議は通りやすいが、希望者のみ層が残ったまま席だけ増える。使われないライセンスと、把握できない個人利用が同居しやすい
2. ツール選定を外注に丸投げ:導入は早いが、業務洗い出し53.3%の課題が社内に残る。納品後に「結局どこで使うか分からない」になりやすい
3. 禁止令だけ出す:表面の利用率は下がっても、現場の下書き需要は消えない。報告されない利用が増えやすい
4. 小さな許可範囲から先に決める:文書作成など効果が取りやすい領域に限定し、入力禁止事項と確認者を先に書く。伸びしろは小さく見えるが、事故と形骸化を抑えやすい

今日やること(3分):自社の生成AI利用を、「全社/特定部門/希望者のみ/ほぼ未使用」のどれかに当てはめ、当てはめた理由を1行でメモする。

次のチェックで、伸ばす前の最低限を確認します。

  • 「活用している」社員が、全社・特定部門・希望者のどれに当たるか言葉にできた
  • 顧客名・単価・未公開の社内情報を入力してよいか、社長と現場で一致している
  • 会社として認めるツール名と、個人の無料アカウント利用の扱いが分かれている
  • 文書作成など、効果が取りやすい業務を1つだけ先に指定できている
  • 出力の最終確認者(誰が押印・送信するか)が決まっている
  • 「何を参考にルールを書くか分からない」なら、禁止事項を5行だけ先に書けている

全部にチェックが付く必要はありません。付かない項目があるなら、席や契約を増やす前に、そこがボトルネックです。大分の中小企業では、情シスが一人、あるいは兼任の会社が多く、ルール作成を完璧な規程書から始めると止まります。まずは「入れてよい/いけない」「最終確認は誰か」の2点からで十分です。

壁打ちの相手がいないまま「流行っているから」で進めると、導入はしても社内に残らない研修と同じ轍を踏みます。判断を一人で抱えないこと自体が、運用設計の一部です。

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まとめ:伸びた54.4%は入口の数字であり、全社化の許可証ではない

・生成AI活用54.4%の内訳では、全社は11.5%、希望者のみは19.5%です
・活用企業の53.2%はルールを整備できておらず、最多は「参考が分からない」34.9%です
・課題の首位は業務洗い出し53.3%。伸ばす前に、使う場所と入力の線を切るほうが損をしにくいです

次の一手は、利用率の見出しを稟議の根拠にするのをやめ、自社が「希望者のみ」か「特定部門」かを正直に書き、禁止事項5行と最終確認者だけ先に決めることです。

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参考:日本商工会議所「商工会議所LOBO(早期景気観測)2026年8月調査」、調査期間2026年8月14日〜20日、有効回答1,920社(日刊工業新聞などでも2026年9月頃に報じられています)