開発・ディレクション

「取適法」を知らない企業が57.1%。大分でシステム開発を発注する社長が今すぐ確認すべき3つのこと

タグ: システム開発 / 外部ディレクター / 要件定義 / 中小企業 / 大分

「うちは発注する側だから、下請法なんて関係ない」——そう思っていませんか。実はその法律、2026年1月に名前も中身も変わっています。しかもシステム開発の外注契約は、まさにこの法律の対象です。


「下請法」が20年ぶりに「取適法」へ。システム開発の外注も対象に

2026年1月1日、下請代金支払遅延等防止法(下請法)が改正され、正式名称「中小受託取引適正化法」、通称「取適法(とりてきほう)」として施行されました。20年ぶりの大きな見直しです。

名前が変わっただけではありません。用語も変わりました。発注する側は「親事業者」から「委託事業者」へ、受注する側は「下請事業者」から「中小受託事業者」へと呼び方が改まり、規制の中身も強化されています。

大分の中小企業の社長やIT担当者にとって見過ごせないのは、対象取引の中に「情報成果物作成委託」が含まれている点です。これはシステム開発、Webサイト制作、アプリ開発の委託契約を指します。つまり、外部の開発会社やフリーランスのエンジニアにシステム開発を発注している時点で、この法律の対象になり得るということです。

さらに今回の改正では、適用対象そのものが広がりました。従来は資本金の額だけで判断していましたが、そこに従業員数の基準(300人、100人)が新たに加わっています。「うちは資本金が少ないから関係ない」と思っていた会社も、対象に入ってくる可能性があります。

大分の社長の57.1%が「知らないまま」外注している可能性

問題は、この法改正がどこまで現場に浸透しているかです。

東京商工リサーチが2025年12月に実施した調査では、法改正について「影響を分析した」と答えた企業は4割強にとどまり、「分析していない」「法改正を知らない」を合わせると57.1%にのぼりました。半数を超える企業が、対応が遅れたまま施行日を迎えたことになります。

さらに、公正取引委員会と中小企業庁は2026年6月19日から「取適法定期調査」を開始し、対象となる委託取引を行う事業者約7万5,000社に調査票を送付、7月21日を回答期限としました。施行後初めての定期調査で、これは法律が「作って終わり」ではなく、実際の取引実態を継続的にチェックしていく体制に入ったことを意味します。

何が変わったのか、旧下請法との違いを整理しておきます。

項目旧・下請法新・取適法
適用基準資本金基準のみ資本金基準+従業員数基準(300人・100人)を追加
呼称親事業者/下請事業者委託事業者/中小受託事業者
価格交渉明確な禁止規定なし価格協議の求めに応じない・一方的な代金決定を禁止行為に追加
対象取引製造・修理・情報成果物作成・役務提供の4委託上記4委託+運送委託を追加
監督体制公正取引委員会・中小企業庁上記に加え事業所管省庁にも指導・助言権限を拡大

特に注目したいのが「価格協議の求めに応じない」ことが新たに禁止行為として明記された点です。システム開発の現場では、要件変更や仕様追加による見積もり増額を発注側が渋る場面が少なくありません。今後はこうした対応そのものが、法律上のリスクになり得ます。

システム開発を発注している大分の社長が今すぐ確認すべき3つのこと

法律の詳細をすべて把握する必要はありません。まずは自社の外注契約が対象になっていないか、次の3点から確認してみてください。

① 発注している開発会社・エンジニアの規模を確認する

取引先が中小受託事業者(旧・下請事業者)に該当するかどうかは、資本金だけでなく従業員数でも判断されるようになりました。「あの会社は個人事業主に毛が生えたような規模だから対象外だろう」という思い込みは危険です。自社が委託事業者として法律の適用対象になっていないか、まず取引先の規模を棚卸ししてください。

② 見積もり増額・仕様変更への対応を振り返る

開発が進む中で仕様変更が発生し、開発会社から追加費用の相談を受けたときに、どう対応してきたか思い出してください。協議に応じず一方的に当初の金額を押し通していた場合、それは新たな禁止行為に触れる可能性があります。要件定義の甘さが後々のコスト増につながる話は本ブログでも以前取り上げましたが、取適法はその「増額分の交渉」自体にもルールを設けたと理解しておくべきです。

③ 契約書・発注書の書面交付ルールを確認する

取適法では書面交付の方法についても明確化が進んでいます。口頭発注や曖昧なメールのやり取りだけで進めている契約がないか、この機会に見直しておきましょう。特に地方の中小企業では、長年の付き合いを理由に契約書を交わさずに発注しているケースも珍しくありません。

まとめ:知らなかったでは済まない、外注契約の「当たり前」が変わった

取適法は、システム開発を発注する大分の中小企業にとって、決して他人事ではありません。57.1%の企業が対応できていないという現実は、裏を返せば「今きちんと対応すれば、取引先からの信頼を積み上げる差別化にもなる」ということです。

契約書の見直しや取引先との関係整理は、社内に法務担当がいない会社にとっては負担が大きい作業です。株式会社コラボでは、システム開発の要件整理やディレクションの実務支援に加え、こうした外注契約の棚卸しについても社長の相談窓口・壁打ちセッションで一緒に整理するお手伝いをしています。まずは自社の契約が対象になっているかどうかから、確認してみませんか。


参考:東京商工リサーチ「『取適法』が1月に施行、20年ぶり下請法が改正 2割が法改正を『知らない』」(2025年12月発表)、公正取引委員会・中小企業庁「2026年度取適法定期調査」(2026年6月19日発表)