セーフティネット保証5号、対象583業種に拡大。大分の中小企業が申請前に確認すべき3つのこと
「うちの業種、対象になっているんだろうか」——資金繰りの相談窓口でよく聞かれる言葉です。2026年7月1日、その対象がまた広がりました。
セーフティネット保証5号、対象が583業種に拡大
中小企業庁は、業況の悪化している業種の中小企業者を対象とする「セーフティネット保証5号」について、2026年7月1日から9月30日までの指定業種を583業種に拡大しました。前回(4月1日)の指定は520業種だったため、3か月で60業種以上の追加です。背景には、中東情勢の影響拡大を踏まえた臨時の業況調査があり、6月11日からは事前相談の受付も始まっています。
制度の要点は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 指定期間 | 2026年7月1日〜9月30日 |
| 対象業種数 | 583業種(4月時点は520業種) |
| 保証の内容 | 一般保証とは別枠で、信用保証協会が80%保証 |
| 保証限度額 | 普通保証2億円、無担保保証8千万円、最大2億8千万円 |
| 主な認定要件 | ①直近3か月の売上高等が前年同期比5%以上減少 ②原油等の仕入価格が前年同月比20%以上上昇し、原価に占める割合が20%以上あるのに価格転嫁できていない ③為替や人手不足など外的要因による原材料費・人件費の増加で利益率が減少 |
| 申請の流れ | 本店所在地の市区町村長に認定申請 → 認定書を金融機関または信用保証協会に持参し保証付き融資を申込み |
指定業種は日本標準産業分類の細分類(4桁)単位で決まっており、業種名だけを見て「関係なさそう」と判断すると、実は対象に入っているケースがあります。
なぜ大分の中小企業にも関係するのか
大分県は運送・建設・宿泊・食品製造など、原油・原材料の価格変動や人手不足の影響を受けやすい業種の比率が高い地域です。中小企業庁の要件を見ても、対象は「売上が落ちている会社」だけではありません。売上は横ばいでも、仕入価格の上昇分を価格に転嫁できずに利益率が落ちている会社も対象になり得ます。
これは、これまで本コラムでも取り上げてきた「原油高騰でも値上げできない」という悩みと直結する制度です。値上げ交渉が思うように進まない間の資金繰りを支える手段として、活用できる可能性があります。
一方で、認定を受けるには決算書や試算表、仕入価格が確認できる請求書など、複数の書類を揃える必要があります。「対象業種だと知らなかった」「必要書類が揃わず期限に間に合わなかった」という声も少なくありません。
申請前に確認すべき3つのこと
1. 自社の業種が指定業種に該当するか
まず、自社の事業がどの細分類番号に当たるかを確認し、中小企業庁が公表する最新の指定業種一覧(令和8年7月1日〜9月30日)に載っているかを照合します。1つの事業だけでなく、兼業している事業がある場合はそれぞれ確認が必要です。判断に迷う場合は、地域の商工会議所や信用保証協会に相談すると確実です。
2. 自社がどの認定要件に当てはまりそうか
「売上減少」なのか「原価に占める仕入価格の上昇」なのか「利益率の減少」なのかで、必要な書類や比較する数値が変わります。直近3か月の売上高、原油・原材料の仕入単価、原価に占める割合をあらかじめ月次で把握しておくと、どの要件で申請できるかがすぐに判断できます。
3. 認定申請から融資実行までの日数を逆算できているか
認定申請は市区町村、保証の申込みは金融機関または信用保証協会と、窓口が分かれています。書類の不備があれば差し戻しになり、資金が必要なタイミングに間に合わないこともあります。資金需要が発生しそうな時期から逆算し、余裕を持って準備を始めることをおすすめします。
申請前チェックリスト
- 自社の事業の細分類番号を確認し、指定業種一覧と照合した
- 直近3か月の売上高等(前年同期比)を確認した
- 原油・原材料の仕入単価の変動と、原価に占める割合を確認した
- 決算書・試算表・売上台帳など、必要書類の有無を確認した
- 顧問税理士や取引金融機関に、申請要件について相談した
大分の中小企業が取るべき選択肢
制度が使えるかどうかは会社ごとに異なります。現実的な進め方は、おおむね次のいずれかです。
選択肢A:まず自社の対象可否だけを確認する
資金繰りに急を要していなくても、対象業種か否か、どの要件に当てはまりそうかを一度確認しておく。いざという時に動き出しが早くなります。
選択肢B:価格転嫁が進まない中でのつなぎ資金として検討する
原材料費の上昇分を価格に転嫁しきれていない場合、認定要件の②や③に該当する可能性があります。顧問税理士と一緒に、原価に占める仕入価格の割合を試算してみる価値があります。
選択肢C:特別相談窓口や信用保証協会に一度相談してみる
自己判断で「対象外だろう」と決めつけず、地域の信用保証協会や商工会議所、中小企業活性化協議会の特別相談窓口に一度確認する。申請の要否にかかわらず、資金繰りの見通しを整理するきっかけになります。
まとめ:制度は「知っていること」が前提になる
セーフティネット保証5号は、申請しなければ使えない制度です。対象業種が583に拡大したという事実そのものより、「自社が対象かどうかを知っているか」の方が、実務上はよほど重要です。
大分の現場でも、原油高・人手不足・価格転嫁の難しさは続いています。今日のうちに、自社の業種と直近の数字を一度確認してみてください。
参考:中小企業庁「中東情勢等を踏まえた中小企業・小規模事業者向け支援について」、中小企業庁「セーフティネット保証制度(5号:業況の悪化している業種(全国的))」(2026年6月11日更新)、農林水産省「セーフティネット保証5号の概要」