「価格転嫁率54.2%」で終わらせない。8月公表の”発注者リスト”前に、大分の社長が確認すべき3つのこと
「値上げをお願いしたのに、結局のらりくらりとかわされた」——そんな経験がある社長は少なくないはずです。経済産業省・中小企業庁が2026年6月に公表した最新調査では、全国の価格転嫁率がようやく54.2%まで来ました。ただ裏を返せば、コスト増の約半分は依然として自社が被っているということでもあります。しかも2026年8月には、価格交渉に消極的な発注企業を名指しする”発注者リスト”が公表される予定です。大分の中小企業にとって、この動きは対岸の火事ではありません。
価格交渉促進月間、10回目の調査で見えたこと
中小企業庁は2021年9月から毎年9月と3月を「価格交渉促進月間」と定め、受注側の中小企業に発注者との価格交渉の実態を尋ねるフォローアップ調査を続けてきました。2026年3月分の調査は今回で10回目となり、2025年10月〜2026年3月末の状況を対象にしています。約30万社に配布し、7万社近くから回答を得た大規模な調査です。
結果を要約すると次の通りです。
- 価格交渉が行われた割合:90.7%(前回89.4%から上昇)
- 価格転嫁率(コスト増加分のうち実際に転嫁できた割合):54.2%(前回から約1ポイント増)
- 原材料費の転嫁率:55.7%
「交渉のテーブルには着けるようになったが、要求した分の半分程度しか通らない」というのが、全国の中小企業の実感に近い数字と言えます。さらに今回、中小企業庁は2026年8月上旬に、発注者ごとの価格交渉・価格転嫁・支払条件への対応を評価した「発注者リスト」を公表する方針を明らかにしています。
なぜ大分の中小企業にも関係するのか
「うちは大企業と直接取引していないから関係ない」と考える社長もいるかもしれませんが、実際にはこの調査結果は他人事ではありません。理由は3つあります。
第一に、大分県内の景況感はすでに3期連続で悪化しており、コスト増を価格に転嫁できない企業ほど利益が目減りしやすい局面にあります。第二に、価格転嫁の可否は取引先との力関係だけでなく、自社が交渉の「根拠」をどれだけ用意できるかに左右されます。第三に、8月公表の「発注者リスト」は、地場の中堅企業が下請けに発注する立場(=発注側)である場合、自社の名前が”消極的”な企業として載るリスクを否定できません。
つまり大分の中小企業の多くは「受注側」として交渉力を上げる必要がある一方、ある程度の規模がある地場企業は「発注側」としても評価対象になり得るという、二重の当事者性を持っています。
| 立場 | 今回の調査で問われたこと | 大分の中小企業への影響 |
|---|---|---|
| 受注側(コストを転嫁したい側) | 交渉の申し入れができたか、転嫁が認められたか | 交渉の”型”がないと54.2%の壁を超えにくい |
| 発注側(仕入先から交渉を受ける側) | 交渉に応じたか、支払条件は適正か | 8月公表のリストで消極姿勢が可視化される可能性 |
大分の社長が今すぐ確認すべき3つのこと
1. 自社のコスト増加分を「数字」で説明できるか
価格交渉が決裂する最大の理由は、感覚的な値上げ要求になっていることです。原材料費・エネルギーコスト・人件費のどこがどれだけ上がったのか、根拠となる数字を用意している会社ほど転嫁率が高い傾向にあります。まずは自社の直近1年のコスト増加要因を項目別に洗い出すところから始めましょう。
2. 自社が「発注側」になっている取引がないか棚卸しする
社長自身は受注側の意識しかなくても、外注先や仕入先との関係では発注側に回っているケースは珍しくありません。8月のリスト公表を機に、自社が下請けに対してどのような価格交渉・支払条件で臨んでいるか、一度棚卸ししておくことをおすすめします。取引先から「あの会社は交渉に応じない」と評価される前に、社内で確認しておく価値はあります。
3. 価格交渉を「一度きりの依頼」で終わらせない仕組みを作る
今回の調査で交渉自体は9割超まで実施されるようになった一方、転嫁率は5割強にとどまっています。これは、価格交渉が単発のお願いになっていて、継続的な見直しの仕組みになっていないことの表れとも読めます。四半期ごとにコスト状況を確認し、必要なら都度交渉する、といった定例化が今後の差になっていきます。
こうした数字の根拠づくりや交渉の仕組み化は、経理担当や社長ひとりで抱え込むと後回しになりがちなテーマです。第三者の視点を入れて整理するだけで、次の交渉から動きが変わることも少なくありません。
まとめ:価格交渉は「一度勝つ」より「毎回できる」仕組みが大事
価格転嫁率54.2%という数字は、全国の中小企業がようやく交渉のスタートラインに立てたことを示す一方、まだ道半ばであることも意味しています。大分の社長にとって重要なのは、今回の調査結果を「他社の話」として読み流さず、自社が受注側・発注側それぞれの立場でどう評価されうるかを確認することです。
数字の根拠づくりや交渉の仕組み化は、社内だけで抱え込まず、外部の視点を借りながら整理した方が早いテーマでもあります。コラボの経営相談・壁打ちセッションでは、こうした経営判断の整理をサポートしています。気になる社長はお気軽にご相談ください。
参考:経済産業省・中小企業庁「価格交渉促進月間(2026年3月)フォローアップ調査結果」、2026年6月26日発表