IT・DX活用

大分県のAI実装基盤「DAIB」が始動。入会する前に社長が確認すべき3つのこと

「AIを使わなきゃ」と思いつつ、何から手を付ければいいか分からない——大分の中小企業では、こうした声がいまだに多いです。そこに県が、専門家と現場をつなぐ新しい枠組みを用意しました。


■大分県が「DAIB」を設立した背景

2026年8月6日、大分市の交流スペース「Garraway 0」で、大分県による「Digital & AI Innovation Bridge(DAIB)」の設立記念フォーラムが開かれました。県内外から61人が参加し、佐藤樹一郎知事もあいさつしています。

DAIBは、人手不足や賃上げといった地場企業が抱える課題を、AIやロボティクスなどの先端技術で解くためのプラットフォームです。IPA(情報処理推進機構)や東京大学先端科学技術研究センター、ソフトバンクなどの専門家がフェロー(技術顧問)を務め、県内事業者とマッチングする設計になっています。対象業種は製造、観光、保育など幅広く想定されています。

会員の年会費は2万円。すでに54社が入会を申し込んでおり、県内でも関心は高い状況です。

一方で、全国の中小企業向け調査では、AIを積極活用している層でも約7割が「使いこなせていない」と感じています。業務フロー全体が変わった、と答えた割合は1.9%にとどまります(ラクスル「中小企業のAI活用に関する実態調査」、2026年5〜6月調査)。つまり「枠に入ること」と「現場で成果が出ること」は別問題です。大分の中小企業も、この差を意識したうえでDAIBを使う必要があります。


■DAIBで何ができるのか——3つのグループと比較

初年度は、次の3テーマのグループが設置予定です。会員はいずれかに所属し、主にウェブ上で情報交換や専門家からの助言を受けます。

  1. ビジネスモデル変革SG
     向いている会社:新規事業や価格・提供方法の見直しを考えている
     期待できること:事例研究と変革の型の学習
     注意点:すぐのツール導入には直結しにくい
  2. AIロボティクスSG
     向いている会社:現場の省力化・自動化が急務
     期待できること:ロボティクス活用の現在地を把握
     注意点:投資判断には現場データの整理が必要
  3. AIエージェントWG
     向いている会社:問い合わせ対応や社内業務の自動化を試したい
     期待できること:実装プロジェクトの創出を模索
     注意点:「何を自動化するか」の定義が先

SGは学びと事例研究が中心、WGは実装プロジェクトの創出が軸です。無料の相談窓口で「方針だけ聞く」のとは違い、年会費を払ってコミュニティに入り、テーマを持って動く前提の仕組みだと捉えると分かりやすいです。

ユーザー会員(課題を持つ事業者)とベンダー会員(技術を提供する事業者)の両方が対象です。自社がどちら側で参加するのかも、最初に決めておくと動きやすくなります。


■入会する前に社長が確認すべき3つのこと

DAIBは「入れば自動でDXが進む枠」ではありません。54社が並ぶ中で成果を出すには、入会前の整理が効きます。次のチェックリストを、社内で一度埋めてみてください。

【1. 課題を「業務単位」で書けているか】

「人手不足を解消したい」「AIを入れたい」だけでは、マッチングも助言も抽象的になります。次のように、業務名・頻度・所要時間まで落とします。

□ 困っている業務名が1つ以上ある(例:見積作成、問い合わせ一次対応、シフト調整)
□ 週あたり・月あたりの所要時間がおおむね分かっている
□ その業務の担当者と決裁者が分かっている
□ 「人が判断すべき部分」と「機械に任せたい部分」を分けてメモした

ここまで書いておくと、スタディグループでもワーキンググループでも、専門家に相談する精度が上がります。

【2. 社内の「窓口」を1人決めているか】

フェローや事務局とのやり取り、ウェブ上の情報交換、社内への持ち帰り——これらを社長ひとりで抱え続けると続きません。IT担当がいない会社でも、「現場を知っている人」を窓口にするだけで十分です。

□ DAIBの連絡・参加を担当する人を1名決めた
□ 月1回は社内共有する時間を確保した(15分でも可)
□ ベンダー提案を受けたとき、断る基準(予算・工数・セキュリティ)を仮決めした

全国調査でも、AI活用の支援として「テンプレート集」や「個別相談」へのニーズが高いです。社内に窓口がないと、せっかくの助言が資料の山で終わりがちです。

【3. 3つのグループのうち、最初の1つを選べるか】

全部に手を出す必要はありません。初年度は、自社の痛みに近い1つに絞るのが現実的です。

□ ビジネスモデル変革/AIロボティクス/AIエージェントのうち、第一希望を選んだ
□ その理由を1〜2文で言える(例:「見積のたたき台作成を週5時間減らしたい」)
□ 3ヶ月後に「何ができていれば成功か」を仮置きした

「とりあえず全部」「流行っているからエージェント」は避けた方がよいです。選択の軸は、自社のボトルネックです。


■入会後に起きやすい失敗と、避け方

よくあるのは次の3つです。

  1. 情報収集だけで終わる
     セミナー視聴や事例共有は有益ですが、自社の1業務に当てないと投資対効果が見えません。毎回「自社のどの業務に使えるか」を1行でもメモしてください。
  2. ツール選定から入る
     ChatGPTやCopilotなど個別ツールの比較は後回しで構いません。先に「どの業務のどの作業を減らすか」を決めた方が、ベンダーとの会話も短く済みます。
  3. 社内共有がなく、社長だけが詳しい
     実装は現場の協力が要ります。窓口担当と現場リーダーに、フォーラムやグループの要点を短く渡す習慣をつけると続きやすいです。

大分県には、これまでもDX相談の窓口があります。DAIBはそれに加え、専門家フェローとテーマ別グループで「学びから実装の芽」までつなぐ位置づけです。すでに無料相談で方針を固めた会社は、次の一手としてDAIBを検討する流れが自然です。逆に、課題がまだ言語化できていない場合は、先に社内整理か壁打ちを挟んだ方が、年会費2万円の効き目は出やすくなります。


■まとめ:枠に入る前に、自社の「1業務」を決めよう

DAIBは、大分の中小企業がAI・DXの専門家とつながるための新しい橋です。54社が入会し、年会費2万円、3つのテーマグループという条件は明確です。ただし成果の差は、入会そのものより「課題の書き方」「窓口」「最初のグループ選び」で決まります。

株式会社コラボでは、社長の相談窓口や壁打ちセッションを通じて、「どの業務から着手するか」「DAIBや県の支援とどう組み合わせるか」を実務目線で整理するお手伝いをしています。入会申込の前に一度、自社のボトルネックを言語化してみてください。


参考:大分合同新聞「AIなど先端技術活用へ大分県が「DAIB」設立」(2026年8月6日)、大分県ホームページ「Digital & AI Innovation Bridge(DAIB)プロジェクト始まります!」(更新日:2026年7月24日)、ラクスル「中小企業のAI活用に関する実態調査 第2回」(調査期間:2026年5月29日〜6月1日)