AIの効果は9割が実感、でも売上向上はわずか3.9%。大分の社長が「効率化止まり」から抜け出す前に確認すべき3つのこと
「AIを入れてから、たしかに仕事は速くなった。でも、それが売上や利益にどうつながっているかと聞かれると、正直言葉に詰まる」。そんな感覚を持つ社長は、決して少なくないはずです。
AI導入企業の9割が「効果あり」と回答。それでも社長が手放しで喜べない理由
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が2026年7月に公表した「DX動向2026」の調査結果によると、AI導入による具体的な効果として「業務が効率化・迅速化した」と答えた企業は91.6%にのぼります。数字だけ見れば、AI導入はすでに”当たり前の成功”と言えそうです。
ところが同じ調査で、「顧客満足度が向上した」と答えた企業はわずか4.5%、「対象となる顧客が拡大した」は2.7%、そして「売上や利益が向上した」に至っては3.9%にとどまりました。効率化の実感と、経営数字への実感の間に、驚くほど大きな溝があるのです。
さらに、従業員101人以下の企業ではAI導入率そのものが16.6%にとどまり、1,001人以上の大企業(約8割)とは大きな差があります。「うちはまだAIどころではない」という大分の中小企業も多いでしょうが、この調査が示すのはもう一段先の問題です。すでに導入した企業でさえ、「効率化止まり」から抜け出せていないという現実です。
AIの使い道は「文書作成」中心。事業を変える用途にはまだ届いていない
同調査でAIの利用用途を尋ねた結果を見ると、業務効率化系の用途に偏っていることがはっきりします。
| AIの利用用途 | 回答割合 |
|---|---|
| 文書・音声の要約・翻訳・校正 | 82.5% |
| 文書・レポートの作成(社内・社外) | 80.5% |
| 情報検索・収集・分析・レポーティング | 77.0% |
| 自社製品・サービスの高度化 | 10.9% |
| 生産・物流・サービス提供の計画支援 | 6.0% |
要約や文書作成、情報収集といった「個人の作業を早くする」用途は8割前後に達している一方、「自社の製品・サービスをより良くする」「生産や物流の計画に活かす」といった、事業そのものに切り込む用途は1割前後にとどまっています。
これは決して大分の中小企業だけの話ではありません。同調査ではDXの取組項目別の成果についても、「アナログ・物理データのデジタル化」や「業務の効率化」では高い成果が出ている一方、「顧客起点の価値創出によるビジネスモデルの変革」といった項目は相対的に低い水準にとどまると報告されています。AIもDXも、入り口の「効率化」までは進みやすく、その先の「価値創出」で足踏みしているのが、日本企業全体の構図と言えそうです。
加えて、DXを推進する人材の「量」が不足していると答えた企業は85.5%にのぼり、AI関連人材についても複数の職種で「不足している」が過半数を占めています。効率化の先に進めない背景には、単純作業を早くする使い方しか思いつかない、という知識不足だけでなく、事業への活かし方を主導できる人材がそもそもいない、という構造的な問題があります。
「効率化止まり」から抜け出すために、社長が確認すべき3つのこと
現場任せでAIツールを配っただけでは、この溝は埋まりません。まずは次の3点を確認してみてください。
- ①「誰の何時間を減らしたか」で止まっていないか。 効率化の実感を「で、それが売上や利益にどう跳ね返るのか」まで一段深掘りする問いを、月次会議に組み込めているか。
- ②AIの活用範囲が「文書」から出ていないか。 見積もりの精度向上、需要予測、顧客対応の質の改善など、自社の事業プロセスに踏み込んだ活用を1つでも試せているか。
- ③「AIに詳しい人」ではなく「事業を主導できる人」が関わっているか。 情シス担当や若手任せにせず、経営層や事業部門を巻き込んだ活用の検討ができているか。
AI活用を「効率化」から「事業への貢献」に進めるための選択肢
社内にAI活用を主導できる人材がいない場合、選択肢は大きく2つです。ひとつは時間をかけて社内で育成すること、もうひとつは外部の壁打ち相手を使いながら、自社の事業プロセスに沿った活用を一緒に設計することです。
前者は確実ですが、IPAの調査が示すとおりAI人材の不足感は業界全体で解消されておらず、大分のような地方で採用や育成だけに頼るのは時間がかかります。後者であれば、まず小さく試しながら「自社にとっての価値創出とは何か」を整理し、無理のないペースで進めることができます。
社長の相談窓口・壁打ちセッションを通じて、AIやDXを「導入して終わり」にせず、自社の数字にどうつなげるかという視点から一緒に整理するお手伝いをしています。「効率化はできたけれど、次に何をすればいいか分からない」という段階こそ、外部の視点が効くタイミングです。
まとめ:AIは「速くする道具」から「稼ぐ道具」へ。次の一歩を決めるのは社長です
AI導入の効果を9割が実感している一方、売上や顧客満足度への効果を実感できているのは1割にも満たないというIPAの調査結果は、多くの企業が「効率化止まり」にいることを示しています。大分の中小企業にとっても、大切なのは「AIを入れたかどうか」ではなく、「入れた先で何を変えるか」です。まずは自社のAI活用が、誰かの作業時間を減らすだけで終わっていないか、一度立ち止まって確認してみてください。
参考:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「国内企業のDX動向・AI活用動向のポイントを公開」2026年7月16日発表