経理を社長ひとりで抱える会社が9割。大分の中小企業が「紙の請求書」のまま損をする前に確認すべき3つのこと
「経理のことは、正直よくわからないまま任せきりだ」——そんな社長は少なくありません。でも、その”任せきり”の実態を数字で見ると、想像以上に危うい状態かもしれません。
経理を「社長ひとり」「兼務」で回している中小企業が9割という現実
東京商工会議所が中小企業のバックオフィス業務について調べた実態調査で、少し背筋が伸びる数字が出ています。
売上高1千万円以下の事業者では、約9割(92.0%)が「1人で経理事務を行っている」と回答しました。さらに、約8割(78.1%)は代表者や営業担当者などが経理を兼務しているという状態です。つまり、専任の経理担当がいない会社がほとんどで、多くは「社長本人」か「片手間の誰か」が帳簿と請求書を握っているわけです。
大分県内の中小・小規模事業者を思い浮かべても、この構図はよく当てはまるのではないでしょうか。人手が限られる地方の会社ほど、経理は「気合と手作業」で回っているケースが多いのが実情です。
問題は、この属人化した経理のやり方が、制度の変化に追いつけなくなっている点にあります。
インボイスと電子帳簿保存法で「事務負担が増えた」会社が8割超
ここ数年、経理まわりの制度は立て続けに変わりました。数字で見ると、現場の負担がはっきり増えているのがわかります。
| 項目 | 中小企業の実態(東京商工会議所調査より) |
|---|---|
| 経理を1人で行っている(売上1千万円以下) | 約9割(92.0%) |
| 代表者・営業などが経理を兼務 | 約8割(78.1%) |
| インボイス制度で「事務負担が増えた」 | 約8割(82.2%) |
| インボイス制度で「コストが増えた」 | 約5割(48.8%) |
インボイス制度で事務負担が増えたと感じる会社が82.2%、コスト増を感じる会社が48.8%。制度対応そのものが、ただでさえ手が足りない経理現場に重くのしかかっている構図です。
さらに見落とされがちなのが、電子帳簿保存法です。2024年1月から「電子取引データの保存」が全事業者に義務化されました。メールやWebで受け取った請求書・領収書は、原則データのまま、日付・金額・取引先で検索できる形で保存しなければなりません。
ところが2026年の今も、メール添付の請求書をわざわざ印刷してファイリングしていたり、検索要件を満たさないままフォルダに放り込んでいたりする会社は珍しくありません。「これまで通り紙で」というやり方が、実は制度上アウトになっている——そのことに気づいていない社長が、まだ相当数いるということです。
なぜ「紙のまま」が中小企業のリスクになるのか
「バレなければいい」という話ではありません。紙のまま・属人化のままでいることには、地味に効いてくるリスクがあります。
- 税務調査で不備を指摘されるリスク。 電子取引データの保存要件を満たしていないと、青色申告の取り消しなど不利な扱いにつながる可能性があります。
- 担当者が抜けたら止まるリスク。 経理を1人に依存していると、その人が病気・退職・産休になった瞬間、請求も支払も回らなくなります。
- 経営判断が遅れるリスク。 月次の数字が締まるのが遅い会社は、赤字や資金繰りの異変に気づくのも遅れます。
つまり経理のデジタル化は、「面倒な義務対応」であると同時に、会社を止めないための備えでもあるのです。
大分の社長が今すぐ確認すべき3つのこと(チェックリスト)
では、何から手をつければいいのか。難しく考える必要はありません。まずは自社の現状を、次の3点で確認してみてください。
1. 電子取引データは「検索できる形」で保存できているか
メールやWebで受け取った請求書・領収書を、印刷ではなくデータのまま、日付・金額・取引先で探せる状態にしていますか。クラウド会計や専用ソフトを使えば自動で要件を満たせますが、「フォルダに手作業で入れているだけ」なら要注意です。まずここが、電子帳簿保存法対応の最低ラインです。
2. 経理は「その人がいなくなっても回る」状態か
請求・支払・記帳の流れが、特定の1人の頭の中だけにありませんか。手順が共有されておらず、社長ですら中身を把握していない場合、それは会社の弱点です。誰が見てもわかる形に「見える化」しておくことが、属人化から抜け出す第一歩になります。
3. 補助金を使って「投資として」デジタル化できないか
会計ソフトやバックオフィス系のツール導入には、国の補助金が使える場合があります。たとえば「デジタル化・AI導入補助金2026」は、在庫管理や決済・会計といった業務ソフトの導入を支援する制度です。人手不足対応の「中小企業省力化投資補助金」も選択肢になります。自己負担を抑えながら仕組みを整える——このタイミングを逃す手はありません。
「うちの経理、そもそも何が問題か分からない」ときの相談先
とはいえ、ここまで読んで「言いたいことはわかるが、自社に当てはめて何をどう直せばいいのか分からない」と感じた社長も多いはずです。経理のデジタル化は、税理士に丸投げすれば終わる話でもなければ、ソフトを1本入れれば解決する話でもありません。自社の業務の流れ全体を、いったん棚卸しする必要があります。
株式会社コラボ(大分市)では、「社長の相談窓口/壁打ちセッション」を通じて、こうした”何から手をつけるべきか”の整理をお手伝いしています。ITツールの選定だけでなく、そもそも今の業務のどこがボトルネックなのか、どこをデジタル化すれば効くのかを、一緒に考える伴走型の対話です。「補助金を取ること」がゴールではなく、「会社が止まらない仕組みを作ること」を出発点に据えます。
経理を1人で抱えていること自体は、悪いことではありません。ただ、それが「気づいたら誰も直せない状態」になる前に、一度立ち止まって見直す価値は十分にあります。
まとめ:(一言で言うと)
中小企業の9割は経理を1人で回し、8割超がインボイスで事務負担増を実感しています。電子帳簿保存法の完全義務化後も「紙のまま」の会社は、税務・事業継続・経営判断の3方向でリスクを抱えたままです。まずは「検索できる保存」「属人化の解消」「補助金の活用」の3点を確認し、必要なら早めに相談先を持つことが、会社を止めないための現実的な一手になります。
参考:東京商工会議所「中小企業におけるインボイス制度、電子帳簿保存法、バックオフィス業務の実態調査」/中小企業庁「デジタル化・AI導入補助金2026」公募要領(2026年3月公開)